相続にかかる税金はどれくらい?相続税の計算と節税方法を解説

親から財産を受け継ぐ場合、気になるのは相続税がどれくらいかかるかでしょう。相続税はかかるケースとかからないケースがあります。また、かかったとしても税額を減らすことは可能です。本稿では相続税の基礎知識に加え、計算方法や節税方法を解説します。

相続税の仕組みはどうなっている?

相続税は、被相続人(死去した人)が遺した財産(預貯金・不動産など)を被相続人と特定の関係にある人(配偶者、子ども、孫など)が引き継ぐときに支払う税金です。財産の総額から相続人の数によって決まる基礎控除(3,000万円+法定相続人の数×600万円)を差し引いて、基礎控除を超えた財産に課税される仕組みです。

相続税の仕組み

相続割合は相続人の属性ごとに定められており、上図の例の場合、配偶者が2分の1、長男と長女が4分の1ずつを相続します。ただし、さまざまな税優遇制度があるため、基礎控除を超えても最終的には非課税になる場合があります。

財産によって課税・非課税が分かれる

相続税は財産の内容によって下表のように課税・非課税が分かれます。例えば、課税財産が5,000万円あっても、債務が2,000万円あれば差し引かれて基礎控除以下になるため、相続税は非課税です。

▽表1 課税財産と非課税財産一覧

課税財産 非課税財産
相続財産(土地、借地権、建物、立木、書画骨董、株式、公社債、現金、家庭用財産、電話加入権等) 墓所、仏壇、祭具
生命保険金や死亡退職金の非課税枠等
みなし相続財産(生命保険金、死亡退職金等) 課税財産から引かれる費用
相続開始前3年以内の贈与財産(相続・遺贈により取得した人が受けた財産) 債務、葬式費用
贈与財産(相続時精算課税制度の適用を受けた財産)

相続税の計算方法を覚えよう

課税財産の総額が判明したら、相続税を計算します。相続税総額と、各相続人の相続税計算方法は以下のとおりです。

相続税総額の計算方法

相続税総額の計算方法は、はじめに各人の仮の相続税額を計算します。

各人の仮の相続税額=課税財産総額×法定相続分×税率-控除額

 

計算の結果出た各人の仮の相続税額を合計して表2を基に相続税総額を計算します。

▽表2 相続税の税率と控除額

法定相続分に応ずる取得金額 税率 控除額
1,000万円以下 10% -
3,000万円以下 15% 50万円
5,000万円以下 20% 200万円
1億円以下 30% 700万円
2億円以下 40% 1,700万円
3億円以下 45% 2,700万円
6億円以下 50% 4,200万円
6億円超 55% 7,200万円

ここで、具体的に計算例を挙げてみましょう。

【シミュレーション】相続財産3億円、法定相続人:配偶者、長男50歳、長女45歳

はじめに基礎控除を差し引きます。

相続財産3億円-基礎控除4,800万円=課税財産総額2億5,200万円

次に課税財産総額から法定相続分に応じて仮の相続税額を計算します。

▽表3 相続税総額計算例

課税財産総額 相続人 法定相続分 仮の相続税額
2億5,200万円 配偶者 1/2 1億2,600万円 1億2,600万円×40%-1,700万円=3,340万円
長男 1/4 6,300万円 6,300万円×30%-700万円=1,190万円
長女 1/4 6,300万円 6,300万円×30%-700万円=1,190万円
相続税総額 5,720万円

各相続人の相続税計算方法

各相続人の相続税を計算する場合は以下のとおりです。実際の相続案分も法定相続分どおりに相続するものとします。表3の例で、相続税総額は5,720万円と算出されたので、相続案分に応じて配偶者が2分の1の1億2,600万円、子どもがそれぞれ4分の1の6,300万円を相続税課税価格2億5,200万円で割って実際の相続税額を算出します。

▽表4 各相続人の相続税額計算例

相続人 計算式(相続税総額×実際の相続案分額÷相続税課税価格) 実際の相続税額
配偶者 5,720万円×1億2,600万円÷2億5,200万円 2,860万円
長男 5,720万円×6,300万円÷2億5,200万円 1,430万円
長女 5,720万円×6,300万円÷2億5,200万円 1,430万円

配偶者は法定相続分または1億6,000万円まで相続税がかからないため、非課税となります。長男・長女は税額控除の適用がないため、それぞれ約1,430万円の相続税を納付します。ただし、相続人が20歳未満であった場合は、「未成年者控除」を使うことができます。

課税・非課税の分かれ目になる「基礎控除」

相続税には「基礎控除」があり、下記の計算式によって求めます。相続財産が基礎控除額を超えると相続税が課税されることになります。この基礎控除が課税・非課税の分かれ目になるのです。

相続税基礎控除の計算例

基礎控除の計算例は下記のとおりとなります。

【基礎控除計算式】3,000万円+法定相続人の数×600万円
【基礎控除計算例】法定相続人3人の場合:3,000万円+3人×600万円=4,800万円

 

配偶者の有無や子どもの人数によって税額が異なるため、相続税額概算早見表を使って算出すると便利です。

▽表5 相続税額概算早見表(配偶者がいる場合)

財産総額 相続人
配偶者と子ども1人 配偶者と子ども2人 配偶者と子ども3人
4,000万円 0円 0円 0円
5,000万円 40万円 10万円 0円
6,000万円 90万円 60万円 30万円
7,000万円 160万円 113万円 80万円
8,000万円 235万円 175万円 138万円
9,000万円 310万円 240万円 200万円
1億円 385万円 315万円 263万円
2億円 1,670万円 1,350万円 1,218万円
3億円 3,460万円 2,860万円 2,540万円
5億円 7,605万円 6,555万円 5,963万円
10億円 1億9,750万円 1億7,810万円 1億6,635万円
15億円 3億2,895万円 3億315万円 2億8,500万円
20億円 4億6,645万円 4億3,440万円 4億1,183万円
30億円 7億4,145万円 7億380万円 6億7,433万円
50億円 12億9,145万円 12億5,380万円 12億1,615万円

▽表6 相続税額概算早見表(配偶者がいない場合)

財産総額 相続人
子ども1人 子ども2人 子ども3人
4,000万円 40万円 0円 0円
5,000万円 160万円 80万円 20万円
6,000万円 310万円 180万円 120万円
7,000万円 480万円 320万円 220万円
8,000万円 680万円 470万円 330万円
9,000万円 920万円 620万円 480万円
1億円 1,220万円 770万円 630万円
2億円 4,860万円 3,340万円 2,460万円
3億円 9,180万円 6,920万円 5,460万円
5億円 1億9,000万円 1億5,210万円 1億2,980万円
10億円 4億5,820万円 3億9,500万円 3億5,000万円
15億円 7億3,320万円 6億5,790万円 6億円
20億円 10億820万円 9億3,290万円 8億5,760万円
30億円 15億5,820万円 14億8,290万円 14億760万円
50億円 26億5,820万円 25億8,290万円 25億760万円

相続財産が3,600万円を超えても相続税がかからないケースもある

相続財産が3,600万円以下なら相続税がかからないという話はよく聞くでしょう。これは相続税の基礎控除が「3,000万円+法定相続人の数×600万円」となっているためです。しかし、実際には法定相続人の数が増えれば基礎控除も多くなり、各種の控除制度を活用すれば3,600万円を超えても相続税がかからないケースがあります。詳しく見ていきましょう。

基礎控除額を超えないケース

基礎控除額を超えない場合は非課税となります。法定相続人の数が1人なら3,600万円、2人なら4,200万円、3人なら4,800万円までは相続税がかかりません。養子も法定相続人の数に含めることができますが、実子がいる場合は1人、いない場合は2人までに制限されています。また、法定相続人がいないために特別縁故者が相続人になる場合は、基礎控除が「3,000万円+法定相続人0人×600万円=3,000万円」となります。

基礎控除額を超えるケース

基礎控除額を超えるケースであっても、以下のような各種控除や特例を利用することによって非課税になる場合もあります。可能なものは利用するようにしましょう。

・贈与税額控除(暦年課税)
被相続人から相続開始3年前以内に暦年課税に係る贈与によって取得した財産がある場合は、その人の相続税の課税価格に贈与を受けた財産の贈与時の価額を加算します。加算された贈与財産の価額に対する贈与税の額は相続税の計算時に控除されます。

・相続税の配偶者の税額軽減(配偶者控除)
配偶者は法定相続分または、1億6,000万円のいずれか高いほうの金額が控除されます。例えば、基礎控除を差し引いて1億5,000万円の相続財産を配偶者と子ども1人で相続する場合、法定相続人は2人なので、それぞれ1億5,000万円×1/2=7,500万円が相続財産の金額となります。

相続税額はそれぞれ7,500万円×30%(税率)-700万円(控除額)=1,550万円となりますが、配偶者は法定相続分が非課税なので、本来家族で3,100万円納税すべきところが、半分の1,550万円に節税できます。

・未成年者控除
相続人が未成年者の場合、満20歳(2022年4月1日以降は18歳以上)になるまでの年数1年につき10万円が控除されます。1年未満がある場合は切り捨てで1年として計算します。例えば、15歳9ヵ月の場合は15歳で計算します。この場合、20歳までの年数は5年なので、5年×10万円=50万円が控除額になります。

・障害者控除
相続人に85歳未満の障害者がいる場合は、満85歳になるまでの年数1年につき10万円が控除されます。特別障害者の場合は20万円です。1年未満がある場合は切り上げて1年として計算します。障害者控除額が本人の相続税額より大きくて引ききれない場合は、障害者の扶養親族の相続税から差し引くことができます。

・相次相続控除
相次相続控除は、今回の相続開始前10年以内に被相続人が相続、遺贈や相続時精算課税に係る贈与によって財産を取得して相続税を課されていた場合には、その被相続人から相続した人の相続税額から、一定の金額を控除する制度です。控除額は、前回の相続において課税された相続税額のうち、1年につき10%の割合で逓減した後の金額となります。

・外国税額控除
外国税額控除は、外国にある財産を相続した場合に二重課税を避けるために、基礎控除と別に控除される控除制度です。適用される条件は、「外国にある財産を相続したこと」「外国で相続税に相当する税金を課税されたこと」の2つです。計算式は、

外国税控除額=日本国内の相続税金額×(外国にある財産の価額÷国内財産の合計金額)

です。計算の結果、国内の相続税額と外国の相続税相当額の少ないほうが控除額となります。

・贈与税額控除(相続時精算課税)
相続時精算課税は、贈与した年の1月1日時点で60歳以上の親や祖父母から、贈与を受けた年の1月1日時点で20歳以上(2022年4月1日以降は18歳以上)の子や孫に贈与した場合に、2,500万円まで非課税になる制度です。贈与回数に制限はありません。ただし、名前のとおり相続時に改めて贈与した財産が相続財産に加算して課税されます。

・小規模宅地等の特例
小規模宅地等の特例とは、被相続人が居住または事業をしていた土地について、一定の要件を満たす場合、80%または50%まで相続税評価額が減額される制度です。

相続税を節税する方法

相続税を節税するには、相続税の各種優遇措置活用や、生前贈与、保険金や退職金に関する非課税枠の活用、不動産の建築や購入など多くの方法があります。以下の17項目をはじめ、可能な節税方法を活用して相続税の節税につなげましょう。

【生前贈与を活用した節税方法】

1.生前贈与による節税:定期贈与に注意する

相続税の節税対策でよく利用されるのが生前贈与です。生前贈与とは、被相続人が生存しているうちに、配偶者や子ども、孫などに財産を贈与することです。生前贈与を行うと相続財産を減らすことができるので、相続税の節税になります。

例えば、相続財産が5,000万円ある場合、生前贈与で2,000万円を渡しておけば、相続財産は3,000万円になり、基礎控除内に収まるので相続税が非課税になります。ただし、相続税を節税しても、贈与税の節税対策も行わないと効果的な節税はできません。贈与税の節税で最も効果的なのは暦年贈与の非課税枠を利用して贈与することです。

・暦年贈与の方法
暦年(1月1日~12月31日)ごとに贈与する場合は年間110万円まで非課税となります。もし500万円を一度に贈与すると、500万円-110万円=390万円に贈与税がかかってしまいます。そこで、100万円ずつ分けて5年間で贈与すれば、暦年ごとに非課税となるため贈与税はかかりません。

・生前贈与の注意点
生前贈与で注意しなければいけないのは、年間110万円以下は非課税だからといって、「孫に100万円ずつ10年にわたって贈与する」という形で契約書を作成すると「定期贈与」とみなされることです。 定期贈与の取り決めを行った年に1,000万円の定期資金の権利を贈与したものとみなされ、1,000万円に対して贈与税が課税されます。

・定期贈与とみなされないための対策
定期贈与とみなされないためには、まとめて契約せずその都度、贈与契約書を作成する必要があります。贈与の時期や金額も毎年変えたほうが無難です。また、贈与を行う際に現金を手渡しすると贈与した証拠がないので、銀行振り込みにすることで通帳に証拠が残ります。振り込みは新たに作った通帳ではなく、贈与を受ける人が普段使っている通帳に振り込むことが大事です。

・死去する前3年以内の贈与には課税される
被相続人が死去する3年以内に生前贈与が行われた場合は、贈与額を相続財産に含めなければなりません。これを「生前贈与加算」といいます。余命わずかとわかって慌てて生前贈与する「駆け込み贈与」による節税を防止するためです。

この他にも生前贈与にはさまざまな優遇措置や注意点があるので、個人で把握しきれない場合は専門家に相談するのもひとつの方法です。

2.「相続時精算課税制度」による節税:値上がり確実な財産は生前贈与しておくと節税になる

株式や不動産などで将来確実に値上がりすると見込める銘柄や物件を所有している場合、「相続時精算課税制度」を利用すると節税になる場合があります。例えば、現在株価5,000円の銘柄が数十年後の相続時に1万円に値上がりしていた場合、普通に相続すると時価1万円×株数で計算されてしまいます。しかし、株価5,000円の段階で「相続時精算課税制度」を利用して生前贈与すると相続時も5,000円×株数で計算することができるため節税になります。

3.教育資金に関する非課税制度による節税:30歳に達するまでの期限付きに注意する

「祖父母などから教育資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税制度」は、子どもや孫の将来のための教育資金を一括で1,500万円まで非課税で贈与できる制度です。受け取る人が30歳に達するまでという期限があり、30歳に達した時点で信託契約が終了します。残額があった場合は贈与税が課されるので注意が必要です。この制度は一度に1,500万円相続財産を減らせるので、被相続人の余命がわずかと判断される場合に短期の節税対策として有効です。

【土地を活用した節税方法】

4.「小規模宅地等の特例」による節税:最大80%減額で節税効果大きい

「小規模宅地等の特例」は、下記の一定の要件を満たすと相続税評価額が最大80%減額される制度です。

【小規模宅地等の特例の対象になる土地】
・特定居住用宅地等
住宅として使われていた土地。特例を適用する場合の限度面積は330平方メートル、減額率は80%。
・特定事業用宅地等
事業で使われていた土地。特例を適用する場合の限度面積は400平方メートル、減額率は80%。
・貸付事業用宅地等
不動産賃貸業などに使われていた土地。特例を適用する場合の限度面積は200平方メートル、減額率は50%。

5.収益不動産の贈与による節税:生前贈与して被相続人の現金財産を増やさない

アパートやマンション、駐車場などの収益不動産を所有していると賃貸収入が得られ、被相続人の財産が増えてしまいます。そこで 子どもや孫に生前贈与すると財産が増えることを防止できます。贈与された後の賃貸収入は受贈者である子どもや孫が受け取ることになるため、被相続人の財産にはなりません。ただし、受贈者である子どもや孫が相続人になる場合、相続開始3年以内の生前贈与は「生前贈与加算」で相続財産とみなされます。生前贈与の場合、金額によっては贈与税がかかる可能性があるので注意が必要です。

6.休眠不動産による節税:使っていない不動産を非課税範囲内で売却する

自宅不動産以外に、別荘や山林など使っていない不動産を所有している被相続人もいるでしょう。使っていない不動産を所有していると、固定資産税だけ無駄に支払うことになります。そこで不要な不動産を売却すれば、固定資産税がかからない分節税できることになります。ただし、不動産がなくなってもその分現金で相続することになるため、億ションの別荘など相続額が巨額な場合は相続税が増える可能性もあります。あくまで非課税範囲内(基礎控除等)で売却する場合のみ有効な節税方法です。非課税措置のうち、「3,000万円特別控除」は自宅(居住用不動産)を売却した場合が対象ですので、原則として別荘や山林では使うことができません。

以上は普通に売却する場合ですが、休眠不動産を引き取ってもらったり、寄付した場合は現金化を伴わずに不動産をなくせたりするため、相続税の節税につながる場合があります。

7.「地積規模の大きな宅地の評価」による節税:広大な土地は還付の可能性がある

「地積規模の大きな宅地の評価」は、土地が広すぎると宅地として売ることが難しいため、広大な土地の相続税評価額を低減できる制度です。被相続人が亡くなってから5年10ヵ月以内であれば、申告済みの相続税申告書を見直すことによって、払い過ぎていれば相続税が還付される場合があります。

この制度は以前あった「広大地の評価」が税制改正によって変わったものなので、2017年12月31日までに相続した分については、広大地の評価を適用すると還付を受けられる可能性があります。

8.空き地の有効活用による節税:空き地に賃貸アパートを建築する

更地(建物の建っていない空き地)に賃貸アパートを建築することで節税になります。賃貸アパートの建物評価額は固定資産税評価額が使われるので、60%程度に評価額が低減されます。1億円でアパートを建築した場合は相続税評価額が6,000万円になるため、4,000万円ほど節税できます。ただし、アパートを建てて入居者が見込める立地でないと建築費を回収できない場合があるので慎重な判断が必要です。

9.「家なき子特例」による節税:同居していなかった相続人も特例を受けられる

小規模宅地等の特例を受けるには、被相続人と同居していた相続人がその土地を相続する必要がありますが、同居していなかった相続人も特例を受けることができる「家なき子特例」の要件を満たして利用すれば同居していなかった場合も節税になります。

【保険金を活用した節税方法】

10.「生命保険金等の非課税枠」による節税:他の相続人の了承を得ずに相続できる

相続税には生命保険金の非課税枠が用意されています。計算式は「500万円×法定相続人の数」です。例えば、相続人が3人の場合の非課税枠は1,500万円です。生命保険金が5,000万円の場合は5,000万円-1,500万円=3,500万円に対して相続税が課税されます。

したがって、生命保険金が1,500万円であれば非課税枠を差し引いて0円になるので相続税は課税されません。また、生命保険金は他の相続人の了承を得ずに相続できるというメリットがあります。

11.生命保険による節税:子どもや孫に生命保険をかける

子どもや孫に生命保険をかけることで節税になる場合があります。子どもや孫の保険料を親や祖父母が支払っている場合、生命保険を解約したときに支払われる解約返戻金の金額が相続税評価額になります。解約返戻金が徐々に上がるタイプの場合は、解約返戻金が少ないうちに相続させることで節税につながります。

12.保険金による節税:受け取り方法を一時所得にする

保険金の負担者と受取人を同じにすることで一時所得にすることができます。例えば、子どもが父親に保険金をかけて、保険金の支払いと保険金の受け取りを子どもにすると課税項目が一時所得になります。相続財産が非課税枠ぎりぎりで、保険金を相続財産にしたくない場合は、一時所得にすることで非課税枠に収めることができ、結果的に相続税の節税になります。

【その他の活用方法】

13.養子縁組による節税:相続人が増えるが注意点もある

養子縁組して相続人を増やすのも節税方法として有効です。養子縁組で相続人が増えると「相続税の基礎控除額」「生命保険金等の非課税枠の金額」「死亡退職金等の非課税枠の金額」の規定の金額が増えるため節税になります。養子縁組には普通養子縁組(実の親子の親子関係が継続している状態)と特別養子縁組(実の親子が法的な親子関係を断ち切っている状態)の2つがあります。ただし、「養子の数を法定相続人の数に含めることで相続税の負担を不当に減少させる結果となると認められる場合、その原因となる養子の数は、養子の数に含めることはできない」(国税庁見解)ので注意が必要です。

14.死亡退職金の非課税枠による節税:被相続人が会社員なら活用しよう

会社が社員の遺族に支払う死亡退職金には非課税枠があります。計算式は、「500万円×法定相続人の数」です。死亡退職金は「みなし相続財産」として扱われ、相続税の対象になります。

15.債権整理による節税:会社へ貸し付けた債権を整理する

被相続人が会社の経営者であった場合、会社にお金を貸し付けているケースも考えられます。貸付金債権は相続財産となるため、貸付金債権を相続した人は相続税を支払わなければなりません。回収不能を立証することは難しいため、生前に貸付金債権を整理しておく必要があります。整理するには、役員報酬を減らして借入金の返済に充てる方法があります。社長の役員報酬の額面は減りますが、差額を貸付金債権の返済金として受け取るので、手取り金額に変化はありません。

16.相続税非課税財産による節税:墓地や仏具を生前に購入しておく

被相続人が死去すれば墓地や仏具が必要になります。墓地や仏具は相続税がかかりません。そのため、生前に墓地や仏具を購入しておけば、相続財産が減るので節税になります。墓地・仏壇・仏具・祭具は相続税非課税財産に規定されています。

17.先払いによる節税:相続税申告の税理士報酬を先に支払う

相続税の申告を税理士に依頼した場合は税理士報酬を支払います。税理士報酬は通常相続発生後に支払いますが、前払いすることにより相続財産が減って節税になります。ただし、すべての税理士事務所が前払いを受け付けているわけではないので、あらかじめ確認することが必要です。

法定相続人の順位について知っておこう

民法で定められている遺産をもらえる人のことを「法定相続人」といいます。ただし、遺言状や遺産分割協議の内容によっては法定相続人以外の人が相続する場合もあります。配偶者は常に相続人になりますが、それ以外の相続人については、次のように相続の優先順位が決まっています。

・第1順位 子ども。いない場合は孫(直系卑属)→相続割合は全員で1/2
・第2順位 父母。いない場合は祖父母(直系尊属)→相続割合は全員で1/3
・第3順位 兄弟姉妹。いない場合はその子ども(傍系卑属)→相続割合は全員で1/4

法定相続人の順位

相続税は一次相続よりも二次相続に注意する

相続には一次相続と二次相続があります。一次相続とは、「夫が死去し、妻と子どもが相続人になるケース」のことを指します。一方の二次相続とは、「夫が死去して一次相続をした後に妻も死去し、子どもが相続人になるケース」を指します。相続税においては一次相続よりも二次相続のケースに注意が必要です。

一次相続と二次相続の違いは基礎控除の額と配偶者控除の有無

一次相続と二次相続の違いのひとつが基礎控除における相続人の数です。二次相続では配偶者も死去しているため、養子縁組で子どもが増えない限り、相続人の数が減り相続税が多くなります。

もうひとつは配偶者控除の有無です。一次相続では法定相続分または1億6,000万円まで非課税の配偶者控除がありましたが、二次相続では使うことができません。配偶者控除がなくなることで、二次相続の相続税はかなり多くなる可能性があります。

「小規模宅地等の特例」はどうなる?

一次相続では夫が所有していた住宅を配偶者が相続する場合、「小規模宅地等の特例」が適用されます。しかし、二次相続では配偶者が死去して子どもが相続する場合、子どもが住宅を持っているかどうかで適用の有無が異なります。

まず、子どもが配偶者と同居していた場合は適用されます。 同居していなかった場合でも、子どもまたはその配偶者が3年以上自分の所有する住宅に住んでいなければ利用することができます。一方で、相続開始3年以内に子どもまたはその配偶者が自分の所有する住宅に住んでいた場合は適用されません。

子ども世帯全員が自分の所有する住宅に住んでいる場合は、相続発生3年前までに賃貸住宅に移ることで適用条件を満たすことができます。ただし、リースバックのようにもともと自分の所有だった家を不動産会社に買い取ってもらい、そのまま賃貸で住み続けた場合は、適用されないので注意が必要です。

相続税がいくらかかるかシミュレーションしてみよう

相続税がいくらかかるか、目安を知りたい場合は、上記の概算早見表でも十分ですが、より詳しく知りたい場合はシミュレーションツールを利用して計算するとよいでしょう。シミュレーションソフトはインターネット上に無料で公開されているものもあります。

シミュレーションツールの一例

ここでは、無料で利用できるシミュレーションツールを3つ紹介します。

・税理士法人レガシィ
5項目の入力で相続税課税の有無と、相続税額が表示されます。同じページの中で申告料金概算見積もりもシミュレーションすることができます。税理士に申告を依頼したい人に便利なサイトです。

税理士法人レガシィ「相続税額概算シミュレーション(自動計算)」

・keisan生活や実務に役立つ計算サイト
住宅ローン金利シミュレーションでもおなじみのサイトです。こちらは基本的な入力項目のほか、孫が相続人になるケースについてもシミュレーションすることができます。

keisan生活や実務に役立つ計算サイト「相続税」

・相続サポートセンター
こちらのシミュレーションでは、財産額の入力部分で預貯金、有価証券、不動産、借入金など項目ごとに入力できるようになっています。財産を詳細に入力したい人に向いています。

相続サポートセンター「相続税シミュレーション」

正確な金額を知りたい場合は専門家に相談

目安ではなく、相続税の正確な金額を知りたい場合は専門家に相談する必要があります。相続税の申告は税理士に依頼するのが一般的です。また、簡易的な試算であれば無料で行い相談に乗ってくれる金融機関もあるので、自分のメインバンクに相談してみるのもよいでしょう。

相続税がかからない場合、申告はどうする?

相続財産が基礎控除の範囲内で相続税がかからない場合、申告はどうすればよいのか迷う人もいるでしょう。正味の相続財産が明らかに基礎控除の範囲内である場合は申告の必要はありません。基礎控除範囲ぎりぎりである場合は、新たな相続財産が見つかる可能性があることを踏まえ、申告の準備を進めておいたほうが安心です。また、基礎控除額を超えても、「配偶者の税額軽減」や「小規模宅地等の特例」を利用した結果、非課税範囲内に収まった場合は申告の必要があります。

申告期限は10ヵ月以内

相続税の申告期限は、被相続人が死去したことを知った日の翌日から10ヵ月以内です。所得税の確定申告期限と同じではないので注意が必要です。被相続人が死去した直後は葬儀や法事に追われます。その後も遺産分割協議や各種の手続きなどで時間的な余裕はそれほどないので、申告の準備を早めに始めることが大事です。

申告期限を過ぎたらどうなる?

万一申告期限を過ぎてしまった場合はどうなるのでしょうか。申告期限を過ぎると原則として、法定納期限の翌日から納付する日までの日数に応じて利息に相当する延滞税が課されます。延滞税の割合は以下のとおりです。

・納期限の翌日から2ヵ月を経過する日までは原則として年7.3%と「延滞税特例基準割合+1%」のいずれか低いほうの割合。延滞税特例基準割合は、2022年1月1日~12月31日の期間は年2.4%
・納期限の翌日から2ヵ月を経過した以後は原則として年14.6%と「延滞税特例基準割合+7.3%」のいずれか低いほうの割合。延滞税特例基準割合は、2022年1月1日~12月31日の期間は年8.7%

ただし、諸条件によって延滞税の割合は細かく規定されていますので、詳細は国税庁ホームページで確認する必要があります。

国税庁ホームページ№9205「延滞税について」

準確定申告って何?

準確定申告とは、被相続人が生前に事業を行って確定申告していた場合や、死去する直前に不動産を売却して収入を得た場合に行う確定申告のことです。死去したことを知った日の翌日から4ヵ月以内に申告する必要があります。準確定申告となっていますが、所得税の確定申告とは申告期間が異なるので、相続が発生したらすぐに申告の準備をすることが大事です。

準確定申告する義務があるのに申告しなかった場合は追徴課税のペナルティーが課されるので、生前に収入があった場合は、申告漏れがないように注意しましょう。

準確定申告で税金が還付されることもある

収入が年金のみの場合は確定申告しなくても問題ありませんが、ケースによっては申告することで還付を受けられる場合があります。年金から源泉徴収されていた場合や、高額な医療費がかかり医療費控除を受けられる場合などが該当します。還付申告の期限は5年のため、相続手続きが終わって落ち着いてから申告しても大丈夫です。

相続した家を売りたい場合はどうする?

相続した家を売りたい場合は、「不動産会社に仲介を依頼して買い主を見つける」「不動産会社に直接買い取ってもらう」「友人・知人等に個人間売買で買ってもらう」の3つの方法があります。一般的には仲介を依頼して売る人が多いです。直接買い取ってもらう場合は、仲介で売却する場合の7割程度の買い取り価格になります。

個人間売買は売買契約書の作成や登記手続きなど専門的なことを自分でやらなければならないデメリットがあります。専門家に依頼することもできますが、報酬が発生することから仲介手数料がかからないメリットと相殺されてしまいます。

関連記事:【最新2022年版】【完全ガイド】マンション売却を成功させるためにオーナーが知っておくべき情報を徹底解説!

おすすめの「不動産一括査定サービス」ランキング

不動産を売却する際に、所有する物件がどれくらいの価値があるのか知る必要があります。しかし、不動産会社に査定を依頼すると、複数の会社に別々に依頼しなければならず、手間と時間がかかります。そこで利用したいのが、一ヵ所でまとめて査定できる「不動産一括査定サービス」です。人気の高いサービスとして下表のようなサイトが挙げられます。

▽主要「不動産一括査定サービス」提携社数ランキング

サービス名 提携社数 最大同時査定社数 利用者数
1 LIFULL HOME ’S 3,616社 - 累計838万人
2 アットホーム 2,317社 - -
3 イエウール 約2,000社 - 月間2万人
4 HOME4U 約1,800社 6社 査定累計45万件
4 スマイティ 約1,800社 - -
6 イエイ 約1,700社 6社 累計400万人
6 リビンマッチ 約1,700社 6社 累計440万人
8 すまいステップ 約1,000社 4社 年間500万人
9 おうちダイレクト 11社 - -
10 すまいValue 6社 - 査定累計40万件

※データは各社公式サイトに掲載の数を記載しています(2022年6月13日現在)。

関連記事:不動産売却におすすめの人気不動産一括査定サイト21選を徹底比較!ランキングも紹介

相続税の仕組みを理解し、使える節税方法は可能な限り利用しよう

相続税は相続財産が3,600万円以下であれば基本的に非課税なので、申告する必要はありません。3,600万円以上の場合は相続人の数によって非課税額が変わります。仮に相続税がかかる金額でも、税金を少なくするために利用できる節税方法はたくさんあります。節税方法は相続人が置かれた条件によって利用できるものが限られるので、自分が条件に当てはまる税優遇制度は可能な限り利用するようにしましょう。ただし、生前贈与のように注意点がある節税方法もあるので、慎重に検討しながら相続税の申告義務を果たすことが求められます。

相続税についてよくある質問

Q:相続税の仕組みとは?

相続税は、被相続人(死去した人)が遺した財産(預貯金・不動産等)を被相続人と特定の関係にある人(配偶者、子、孫等)が引き継ぐときに支払う税金です。財産の総額から相続人の数によって決まる基礎控除を差し引いて、基礎控除を超えた金額に課税される仕組みです。

Q:相続税を節税する方法は?

相続税を節税するには、相続税の各種優遇措置活用や、生前贈与、保険金や退職金に関する非課税枠の活用、不動産の建築や購入など多くの方法があります。以下の17項目をはじめ、可能な節税方法を活用して相続税の節税につなげましょう。

1.生前贈与による節税:定期贈与に注意する
2.「相続時精算課税制度」による節税:値上がり確実な財産は生前贈与しておくと節税になる
3.教育資金に関する非課税制度による節税:30歳に達するまでの期限付きに注意する
4.「小規模宅地等の特例」による節税:最大80%減額で節税効果大きい
5.収益不動産の贈与による節税:生前贈与して被相続人の現金財産を増やさない
6.休眠不動産による節税:使っていない不動産を非課税範囲内で売却する
7.「地積規模の大きな宅地の評価」による節税:広大な土地は還付の可能性がある
8.空き地の有効活用による節税:空き地に賃貸アパートを建築する
9.「家なき子特例」による節税:同居していなかった相続人も特例を受けられる
10.「生命保険金等の非課税枠」による節税:他の相続人の了承を得ずに相続できる
11.生命保険による節税:子どもや孫に生命保険をかける
12.保険金による節税:受け取り方法を一時所得にする
13.養子縁組による節税:相続人が増えるが注意点もある
14.死亡退職金の非課税枠による節税:被相続人が会社員なら活用しよう
15.債権整理による節税:会社へ貸し付けた債権を整理する
16.相続税非課税財産による節税:墓地や仏具を生前に購入しておく
17.先払いによる節税:続税申告の税理士報酬を先に支払う

Q:相続税がかからなくても申告は必要?

相続財産が基礎控除の範囲内で相続税がかからない場合、申告はどうすればよいのか迷う人もいるでしょう。正味の相続財産が明らかに基礎控除の範囲内である場合は申告の必要はありません。ただし、基礎控除範囲ぎりぎりである場合は、新たな相続財産が見つかる可能性があることを踏まえ、申告の準備を進めておいたほうが安心です。また、基礎控除額を超えても、「配偶者の税額軽減」や「小規模宅地等の特例」を利用した結果、非課税範囲内に収まった場合は申告の必要があります。

おすすめの記事