
現在住んでいる家の相続を予定している人にとって、最大の不安材料は相続税ではないでしょうか。「自分の家も相続税がかかるのか」「相続税は税率が高いと聞いているが、途方もない金額を納税しなければならないのか」といったように相続税に対する不安は尽きません。
同時に「そもそも自分は相続税の課税対象なのか」「課税対象であれば相続税を少しでも安くする方法はあるのか」といったことに関心がある人もいるのではないでしょうか。そこで本記事では、家の相続税を計算する方法と、さまざまなケース別に相続税を安くする方法について解説します。
目次
相続税とは
そもそも相続税とは、どのような税金なのでしょうか。あまりよく思われていない部分もある税金だけに改めて相続税の仕組みや課税対象、申告の流れなど基礎的な知識について解説します。最初に相続税とは、どのような税金なのかをイメージしてください。
相続人の全員が相続税の課税対象になるわけではない
相続には「相続人」と「被相続人」がいます。被相続人とは、財産を持った状態で亡くなった人のことで被相続人の遺産を相続する人が相続人です。相続税は、相続人が納めるべき税金で、遺産には現金や有価証券だけでなく不動産や貴金属など財産価値の高い物すべてが含まれます。後述しますが、こうした遺産を相続する人の全員が課税対象になるわけではありません。
相続税には、基礎控除があるので遺産の評価額が基礎控除額を上回らなければ相続税の課税対象外です。また基礎控除以外にもさまざまな控除が設けられているので、これらの控除を差し引いた結果、遺産額が基礎控除額以下になった人は、同じく相続税の課税対象とはなりません。
相続税申告の大まかな流れ
相続税の申告期限は、所得税のように「2月16日~3月15日」と定められているわけではなく被相続人が亡くなったことを知った日の翌日から10ヵ月以内と定められています。相続税申告とは無関係ですが、被相続人が亡くなったら葬儀や相続財産の整理などが必要です。これらの作業を済ませたうえで遺産の評価額を算定しなければいけません。
また相続人が複数いる場合は、遺産分割協議を行って相続人すべての合意を得て遺産分割協議書を作成することが必要です。これらの作業を経たうえで相続税の申告を行い納税する流れになります。実際にこれら一連の流れを10ヵ月以内に完了するには、かなりハードな部分があるので、被相続人が生前のうちに遺産の内容を整理したり相続配分を取り決めたりすることが重要です。
家の相続税を計算するための基礎知識5つ
家の相続税を計算するためには、家に関連する相続税についての基礎知識をマスターしておく必要があります。ここでは、家の相続税を計算するために必要な知識を5つの項目でまとめました。
相続するすべての財産が対象になる
家の相続税額を計算する方法が本記事のメインテーマですが、相続する財産は家だけではありません。家などの不動産以外にも被相続人が保有する現金や貴金属などの財産があればそれらも相続財産としてすべて一緒に計算することになります。家とそれ以外の財産を別に計算するわけではないことを押さえておきましょう。
またプラスの財産だけではなく借金や未払金、保証債務といったマイナスの財産を遺して被相続人が亡くなることもあります。この場合は、家やそれ以外の財産と差し引きをして遺産総額を算出することが必要です。被相続人の保有するプラスとマイナスすべての財産を合算し課税遺産総額を求めたうえで相続税率を乗じて相続税額が算出されます。
法定相続人が誰なのかを事前に把握しておこう
遺産を相続する権利がある人は、法律によって定められており、法律で定められている相続人のことを法定相続人といいます。法定相続人の優先される順位は、以下の3つです。第1~第3順位まで定められており、それぞれ上の順位に該当する人がいなければ次の順位に繰り下がっていきます。
| 順位 | 該当する人 |
| 第1順位 | 被相続人の配偶者+子ども |
| 第2順位 | 被相続人の配偶者+父母、祖父母 |
| 第3順位 | 被相続人の配偶者+兄弟姉妹 |
配偶者は、どのようなケースでも法定相続人となります。この順位表をもとに、今後予定している相続での相続人が誰なのかを把握しておきましょう。例えば第1順位に誰か1人でも該当者がいれば第2順位に繰り下げられることはなく、第1順位に該当する1人が唯一の相続人となります。
相続税が非課税になる基礎控除額とは
相続税には、基礎控除があります。基礎控除とはどのような相続のケースでも等しく適用される控除のことです。遺産の評価額から基礎控除額を差し引いた評価額が相続税の課税対象額となります。つまり、遺産の評価額が基礎控除額を下回れば相続税の課税対象とはなりません。基礎控除額は、以下の計算式で求めます。
基礎控除額=3,000万円+(法定相続人の人数×600万円)
例えば被相続人(夫)が亡くなり妻と子どもが2人の場合は、以下の計算式で基礎控除額を算出します。
3,000万円 + (相続人3人 × 600万円) =基礎控除額 4,800万円
この家庭の場合、被相続人の遺産評価額が4,800万円を超えなければ残された家族に相続税は発生しません。
戸建ての評価基準と評価する人
戸建て住宅は、家屋(建物)と土地を分けて相続財産として評価します。評価は、申告する相続人が行ったり申告者から依頼を受けた税理士などが行ったりすることが可能です。ただ申告を受けた税務署でも評価を行うため、相違点があれば指摘されることになります。土地と建物の評価方法は、以下の通りです。
土地の評価方法
戸建て住宅の土地の評価は「路線価方式」といって原則として定められている路線価に面積を乗じて計算します。一方で路線価が定められていない土地の場合は「倍率方式」です。しかし、相続税が発生するような戸建て住宅の多くは路線価が定められている土地なので、路線価方式を押さえておけば問題ないでしょう。
家屋(建物)の評価方法
戸建て住宅の家屋、つまり建物部分は固定資産税評価額に1.0を乗じた金額が評価額です。固定資産税評価額は、市区町村から送られてくる課税明細書や固定資産税課税台帳を見ればわかります。
マンションの評価基準と評価する人
マンションの場合も戸建て住宅と同様に土地と建物を分けて計算します。戸建て同様に申告する相続人が評価したり委託を受けた税理士が評価したりすることも可能です。申告を受けた税務署は、申告内容について正しいかどうかを独自で評価します。では、マンションの場合は土地と建物とどのように評価するのでしょうか。
土地の評価方法
戸建て住宅と違ってマンションは、多くの住居で敷地を共有しています。そのためマンションが建っている土地のすべてが評価の対象になるわけではありません。マンションの場合は、持ち分割合といってマンションが建っている土地のうちどれだけの持ち分があるのかが決められています。戸建て住宅の評価と同じく路線価方式もしくは倍率方式で土地を評価するのが一般的です。
しかし多くのマンションが建っている土地は、戸建て同様に路線価方式で評価することになるため、この場合は土地面積に持ち分割合に路線価を乗じたものが土地の評価額となります。
建物の評価方法
マンションの建物部分については、戸建て住宅の家屋と同じです。固定資産税評価額に1.0を乗じたものが建物部分の評価額になります。
家の相続税について計算方法を解説
相続財産の評価において不動産は特殊な方法で評価されるため、現金や預貯金と比べると財産評価を低くすることが可能です。そのため減額分が相続税の節税となります。家も不動産なので正しい計算方法を知っておくと節税に役立てることができるでしょう。
土地の詳しい評価方法
不動産は、上述したように土地と建物に分けて評価をします。評価方法の基本的なことは、すでに解説しましたので前章をお読みください。
土地については、路線価方式の場合、路線価に面積を乗じたものが評価額になると述べました。これは基本なのですが、これだけでは土地を正しく評価できません。さらに正確な評価をするためには、補正率を乗じる必要があります。
補正率とは、特殊な形状をしている宅地について「使い勝手」が悪いことを評価に加味できるものです。例えば以下のような土地は補正率を乗じます。
・間口が狭い旗状になっている土地
・奥行きが長い土地
・不整形地
・私道に隣接している場合、法規制で建物を後退させる必要がある土地(セットバック)など
こうした「使い勝手」の悪い土地は、補正率を乗じることで評価を減らすことが可能です。また土地の大まかな評価額の目安は、実際の価値と比較して80%程度になります。よく「現金よりも不動産のほうが相続対策になる」といわれるのは、このような不動産特有の評価減があるからです。
ここでは、路線価方式の評価計算について解説していますが、土地の評価方法には倍率方式もあります。路線価が設定されていない土地は、倍率方式といって固定資産税評価額に倍率を乗じた金額で評価することが必要です。
倍率方式における倍率は、地目によって異なり毎年7月に国税庁が公表する評価倍率表でその年に適用される倍率が決まります。
進捗率と評価額の関係
相続の対象となる不動産は、完成した建物だけとは限りません。なかには、建築中の建物の所有者が亡くなり、それが相続財産となることもあります。この場合は工事の進捗率によって評価額が異なるため、注意が必要です。建物の評価額は固定資産税評価額をもとに算出されますが、固定資産税評価額は建物が完成して使用できる状態であることが大前提となっています。
そのため、建物が建築中の場合は、建物の費用原価の70%を乗じた金額が評価額です。しかしそれでは、工事の進捗率が考慮されていないのでさらに進捗率を乗じた金額が正確な評価額となります。
ここでは、総工費5,000万円の建物が工事進捗率50%のときに被相続人が亡くなったと仮定して、評価額を求めてみましょう。
まず5,000万円に進捗率の50%を乗じて2,500万円(費用原価)を算出。この2,500万円に建築中の建物の70%を乗じて「2,500万円×70%=1,750万円」となります。総工費5,000万円の建物でも建築中かつ進捗率が50%の場合は、評価額を1,750万円にまで減らすことが可能です。
賃貸住宅の借家権割合
被相続人が所有していた不動産が賃貸住宅の場合は、入居者の権利があるため、その権利分だけ所有者の権利が制限されます。このことを考慮して賃貸住宅を相続する場合は、借家権割合を乗じて評価することが必要です。
借家権割合は全国一律で30%なので賃貸住宅を相続する場合、一律で評価額から30%を減らすことができます。
家の相続税を節税する方法
「相続税は高い」というのは多くの人に共通する思いでしょう。実際に税率は、決して低くはないので何か相続税を節税する方法はないのかと考える人は多いのではないでしょうか。詳しくは、次章で解説しますが不動産を相続する場合に適用できる節税方法は、主に以下の4つです。
配偶者が相続する場合、別途申告することで1億6,000万円の大きな控除があります。
・相次相続控除
今回の相続開始前10年以内に相続が発生し今回の被相続人が相続税を納税している場合は、一定額の控除があります。
・小規模宅地等の特例
特定の要件を満たした小規模宅地については、土地の評価を80%減らせる特例があります。
・生前贈与の活用
相続ではなく被相続人が生前贈与することで一定の節税効果を得ることが可能です。
家の相続税を計算する際に知っておきたい控除6選
家を相続するにあたって相続税を節約するには、さまざまな控除を熟知したり駆使したりする必要があります。「最終的には税理士に依頼するから」という人の場合でも、家の相続で節税に役立つ6つの控除は知っておきましょう。
すべての相続に適用される「基礎控除」
冒頭でも解説しているようにすべての相続に適用されるのが「基礎控除」です。「3,000万円+(法定相続人の数×600万円)が基礎控除額になります。
例えば妻と子ども2人が相続人だと相続人の合計は3人となり基礎控除額は4,800万円です。相続財産が自宅と少額の預貯金という場合なら、基礎控除の範囲内で非課税になるケースが多く自宅などを相続する場合は特に熟知しておきたい控除といえます。
1億6,000万円の大きな控除「配偶者の税額軽減」
被相続人に配偶者がいる場合、配偶者は必ず法定相続人となります。しかし配偶者は、被相続人と年齢が近いことが多く相続後すぐにその配偶者が亡くなり相続が発生することも少なくありません。こうした事情を受けて配偶者の相続については、最大1億6,000万円までの控除が設けられており税額の軽減ができます。
配偶者の法定相続分は、2分の1なので被相続人に3億2,000万円以上の遺産がなければ配偶者に相続税は発生しません。
10年以内に相続があれば「相次相続控除」
今回の被相続人が過去10年以内に相続税を納めている場合は、相次相続控除が受けられます。これは、連続して相続税を納めることによる負担増への軽減措置です。
控除される金額は、前回の相続で納税した金額に対して「1年あたり10%ずつ逓減した金額」となっています。つまり、前回の相続が近ければ近いほど控除額が大きくなる仕組みです。
20年以上の夫婦であれば「おしどり贈与」
「おしどり贈与」というのは通称で正式には贈与税の配偶者控除のことです。婚姻期間が20年以上の夫婦に適用されるため、「おしどり夫婦」になぞらえてこう呼ばれています。
贈与税には、毎年110万円までの基礎控除がありますが「おしどり贈与」を適用すれば最高2,000万円までの控除枠を上乗せ可能です。つまり、暦年贈与とおしどり贈与を適用すると合計で2,110万円となります。
相続税の控除ではありませんが、生前贈与を活用して節税をする際によく用いられるスキームです。
最大80%OFF「小規模宅地等の特例」
被相続人が所有していた住居や事業用の土地、さらには賃貸事業のために所有していた土地などの評価額を最大で80%も減額できるのが小規模宅地等の特例です。原則として被相続人と相続人が同居している必要がありますが、同居していなくても相続人が不動産を所有していないなどの要件を満たしていれば適用されることもあります。
小規模宅地等の特例は、家を相続する場合にとても節税効果の大きい制度なので、家を相続する場合は条件に該当しないか必ず一度チェックしてみてください。
令和2年からの新制度「配偶者居住権」
配偶者居住権の制度は、2020年4月から新設されました。被相続人の配偶者が被相続人の死後も一定期間にわたって無償で住み続けることができる権利のことです。
同制度が設立される前から被相続人の配偶者は、被相続人の死後も居住する権利がありました。しかし、配偶者の居住権が明確になることで登記も可能になり第三者に対抗することもできるようになりました。
建物の価値を所有権と居住権に分けることが大きな特徴で、これによって残された配偶者が法的に居住権を取得して住み続けることができます。
家の相続税を節約する方法まとめ
ここまで相続税を節約するためのさまざまな方法を解説してきましたが、ここで改めて相続税を引き下げられる可能性がある5つの方法を解説します。既出の方法もありますが、そうでないものもあるのでおさらいも兼ねて押さえておきましょう。
まずは基礎控除を計算しよう
基礎控除は、すべての相続に適用される控除なので相続が発生したら真っ先に考慮するべきものです。すでに計算方法については解説しましたが以下の計算式で控除額を求めることができます。
基礎控除額=3,000万円+(法定相続人の数×600万円)
ここまでの解説では、妻と子ども2人のケースを一例として挙げているので基礎控除額は4,800万円でした。しかし妻と子どもが3人いる場合は、1人分の600万円が増えて5,400万円となるように、法定相続人が何人いるかで基礎控除額は大きく変動します。
また、法定相続人が「自分は相続の意思がない」として相続放棄した場合、遺産相続はしないものの基礎控除を計算する際の法定相続人には含まれます。
小規模住宅地等の特例を忘れずに
家を相続する場合に必ず一度はチェックしたいのが小規模宅地等の特例です。被相続人が土地を所有していた多くの場合に適用され、しかも土地の評価額を最大で80%も減額できるので節税効果が大きく、該当するのに適用しないのはかなりもったいない特例といえます。被相続人自身が居住していて相続人も同居していた場合は、330平方メートルまでが80%の減額対象です。
このケースに該当する相続は多いと思いますので、その場合は宅地分の評価額が330平方メートルまで80%減になると考えて問題ありません。ここでは、被相続人と相続人が同居しているケースを想定していますが、同居していない場合でも相続人に持ち家がないなど一定要件を満たせば適用できる場合があります。
そのため家を相続する場合は、どのような条件であっても小規模宅地等の特例を適用できないかを一度確認する価値があります。
相続税を大きく節約できる2つのテクニック
上記以外にも相続税を大きく節約できるテクニックが2つあります。1つ目は、すでに解説した配偶者の税額軽減です。控除額が1億6,000万円もある制度はほかにないので、かなり多額の相続でも配偶者は無税にできる可能性があります。
2つ目は、土地の形状や周辺の状況などによって土地の評価を減額できる可能性です。例えば旗状になった土地は、奥行価格補正によって評価の減額ができます。また、建築基準法による規制で再建築する場合に建物を後退させる(セットバック)ときも評価減の対象です。
このように土地の「使い勝手」が悪い要素は評価を減額できる可能性がありますが、専門的な知識が必要となるため、税理士に相談することをおすすめします。この段階で重要なのは、複雑な形状や何か条件が付いている土地の場合、「減額できる可能性がある」ということを知っておくことです。
生前贈与も視野に入れよう
相続が発生してからは、当然贈与はできません。しかし被相続人が生前のうちに対策を講じるのであれば生前贈与も選択肢の一つに入ります。生前贈与とは、被相続人が生きているうちに財産を相続人もしくは相続させたい人に移転する手続きのことです。生前贈与には、贈与税がかかるのでコストがかからないわけではありません。
しかし、さまざまな控除などを活用すれば生前に財産の一部もしくは全部を低コストで移転することが可能です。生前贈与にも基礎控除があります。例えば毎年110万円までは、無税で贈与することができるため、毎年続ければ少しずつ財産を移転することができます。
仮に相続を予定している人が妻と子ども2人の場合、3人に毎年110万円ずつ贈与すれば10年後には3,300万円分を無税にできる場合もあり、これを「暦年贈与」といいます。ただし、贈与税がかかるケースもあるため、事前に税理士などに相談することをおすすめします。
状況によっては相続時精算課税制度にもメリット
生前贈与には、相続時精算課税制度があります。60歳を超える父母もしくは祖父母から20歳以上の推定相続人に対して財産を贈与する場合、2,500万円まで控除される制度のことです。ただしこれは「相続時精算」という名称の通り相続時に清算されるため、贈与税と相続税がすべて無税になるわけではありません。
では、相続時精算課税制度にどのようなメリットがあるのでしょうか。考えられる主なメリットは、2つです。1つ目は、財産の先渡しです。相続時にいずれ財産を移転するのであれば早めに財産を推定相続人に移転して財産を有効に活用することができます。
2つ目は、相続する予定の財産価値が今後高くなる可能性がある場合です。地価の上昇が見込まれる土地を相続する場合、値上がりする前に贈与しておけば低コストで財産を移転することができます。
家を相続する時の7つの注意点
家(不動産)を相続する場合には、注意したい点がいくつかあります。ここでは、家を相続する際に留意しておくべき注意点を7つの項目にまとめました。いずれも該当するケースが多いと思いますのでチェックリストのように活用してください。
相続税対策の「共有」の注意点
民法第249条では、共有物について「その持ち分に応じて使用することができる」と規定しており、これは不動産の場合も該当します。被相続人の遺言などで不動産の分割を禁じ、共有による相続を希望している場合は、遺言通りにすることが必要です。共有名義による相続は、分割の必要がなく法律上の争いが起きにくいメリットがあります。
しかし不動産を処分する際は、共有名義人全員の同意が必要となるため、処分が難しくなる点はデメリットです。遺言が特にない場合は、共有による相続が得なのか損なのか、よく精査して選択するようにしましょう。
相続登記を忘れずに
相続で家など不動産の所有権が移転したら、そのことを管轄の法務局で登記することが必要です。2024年3月までは、登記に期限がなく法的に対抗する必要がなければ登記をしなくても問題ありませんでした。
しかし2024年4月からは、相続登記が義務化されます。義務化されていなくても家の所有権を明確にすることは、リスク回避の観点からも重要です。相続で家を取得した場合は、登記も忘れずに行うようにしましょう。
代償分割でスムーズな遺産分割を
家を相続する場合、複数の相続人がいると遺産分割が困難な場合があります。不動産を共有名義にする弊害は、すでに解説した通りです。
しかし家を物理的に2つ、3つと分割するわけにもいきません。そんなときに活用されるのが代償分割です。代償分割とは、家など分割しにくい財産を相続した人がその代わりにほかの相続人へ現金を支払うなどの形で権利を調整することを指します。
代償分割を上手に活用すれば、円満な分割が期待できるでしょう。家の相続では代償分割を活用するケースが多く、相続にあたって代償分割の方法があることを知っておくとスムーズな遺産分割に役立ちます。
借地権も相続財産
被相続人が住んでいた家が借地に建っているというケースも少なくありません。建物は、被相続人の所有物ですが、その建物が建っている土地は他人から借りている場合です。この場合、相続開始と同時に建物と土地の相続が開始されます。しかし土地は、地主の所有物となるため、この場合は借地権が相続財産として扱われるのです。
借地権を相続する場合は地主の承諾が特に必要になることはなく、ほかの相続財産と同様に相続人へ継承することができます。
相続放棄の注意点
被相続人に借金がある場合によく用いられるのが、相続放棄です。それ以外にも被相続人と絶縁状態にあって土地や財産もいらないということで相続放棄の意思を示すこともあるでしょう。相続放棄で注意したいのは、単に「財産はいらない」とほかの相続人に伝えただけでは放棄したことにはならない点です。
相続放棄のためには「相続放棄申述受理証明書」を被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所へ提出する必要があります。全国にある家庭裁判所の所在地は、裁判所のホームページで確認できるので、被相続人の住民票所在地を管轄している家庭裁判所へ上記書類について相続開始を知ったときから3ヵ月以内に提出しましょう。
相続手続きには期限がある
相続手続きに10ヵ月という期限があることは、すでに解説した通りです。しかしそれ以外にもさまざまな手続きの期限に注意する必要があります。相続税の申告期限を含めて各種手続きの期限は、以下の通りです。
| 手続き内容 | 期限 |
| 相続税申告 | 被相続人が亡くなったことを知った翌日から10ヵ月以内 |
| 相続放棄 | 同3ヵ月以内 |
| 限定承認 (被相続人の財産状況を知ったうえで相続の判断をする方法) |
同3ヵ月以内 |
| 遺留分侵害額請求 (相続人の権利分が侵害されていることに対して侵害分を請求すること) |
相続開始、および遺留分侵害を知ってから1年以内 |
相続税は現金納付が基本、それができないときはどうする?
相続税の納税は、原則として現金です。家を相続した場合は、不動産を相続することになるので、相続税が発生したら手持ちの現金から納税をする必要があります。
もし現金が用意できない場合、取り得る選択肢は2つです。1つ目は、物納といって家を不動産の形のまま納税する方法です。担保権の設定登記など権利関係に不適格事由がなければ不動産の形で納税することができます。
2つ目の方法は、家を売却した資金で納税する方法です。相続した家を売って納税しても手元にお金が残ることが見込めるのであれば、有効な方法でしょう。
相続で取得した家の最適な取り扱いを5つのケース別に解説
家を相続した場合、望む、望まないにかかわらず不動産を取得することになります。相続で取得した家をどうするか、その取り扱いをケース別に分けてそれぞれの取り扱いについて解説します。
相続人自身が住む
相続で取得した家に相続人自身が住むのは、最もコストがかからずデメリットもほとんどないので理想的な選択肢といえます。しかし自分で建てた家ではないので、いざ住んでみると「思っていたより古く老朽化が進んでいる」「狭いので使い勝手が悪い」など想像と違うと感じることもあるでしょう。
あまりにも生活に支障を感じる場合は、建て替えをするか売却をして住み替えの費用に充てるなども選択肢の一つです。被相続人から受け継いだ家を守ることは大切ですが、今住んでいる人の生活の質を低下させないような工夫は必要でしょう。
売却して現金化する
「相続人にすでに自宅がある」「相続したのは実家で自宅から遠い」など相続した家に住むことが現実的ではないこともあるでしょう。その場合に検討される選択肢が売却による現金化です。しかし家の売却は簡単ではありません。特に遠隔地の家を売却するとなると土地勘もあまりありませんし、地元の不動産会社とのコネクションもないことのほう多いでしょう。
そんなときには、ネット上にたくさんある不動産一括査定サイトを利用するのが便利です。物件情報を一度入力するだけで複数の不動産会社に査定依頼を出すことができるため、相見積もりをとりながら有利な環境で売却を任せる不動産会社を絞り込んでいくことができます。
収益不動産にする
相続で取得した家に自分で住む予定がない場合は、収益不動産にすることも選択肢の一つです。賃貸住宅にして家賃収入を得られれば安定的な副収入になります。
しかしそもそも自分にも使う予定のない家なので、それを必要とする人がどれだけいるのかは未知数です。賃貸重要のある地域の家であれば修繕や補修などをすることで賃貸に供することができるかもしれません。
ただ、魅力的な物件づくりや客付けなどには、専門的なノウハウが必要になるので、地元の不動産会社などに相談しながら進めるのがよいでしょう。
今はとりあえず現状で放置する
特に利用する予定がなく売却や賃貸という選択肢も当面考えていない場合は、消去法で「今はとりあえず放置」となります。「放置しておいていつか利用することになったときに考えればいい」と思いたいところですが、その場合は注意したいことが2つあるため、押さえておきましょう。
1つ目は、放置していても不動産を所有していると固定資産税と都市計画税がかかるという事実です。まさに空家賃のようなコストなので、税金を支払い続けることに抵抗があれば放置は得策ではありません。2つ目は、特定空家の問題です。これについては、次項で解説します。
相続した家を放置するとどうなる?
放置している家に「倒壊の危険がある」「衛生上有害」といったリスクがあると見なされた場合「特定空家」に指定される可能性があります。
特定空家に指定されると住宅用地特例から除外されてしまうので、固定資産税が6倍になりますし、さらに放置していると勧告、命令ののちに行政代執行において自治体によって解体される可能性も否めません。
こうした事態を回避するためにも、やはり放置は得策ではありません。使う予定がない家を相続したのであれば売却か賃貸利用を早期に検討するべきでしょう。
相続した家を売却する時のポイント
前章の解説で相続した家を利用する予定がないのであれば「売却するか」「賃貸にするか」について選ぶべきと述べました。ここでは、相続した家を売却する時のポイントについて解説します。
不動産会社には得意・不得意がある
不動産会社といってもそれぞれの会社には、得意分野とそうでない分野があります。例えば賃貸専門の不動産会社は、賃貸物件の取り扱いには精通していますが、売却の経験はほとんどないでしょうし逆も然りです。また売却に強い不動産会社のなかには、戸建て住宅やマンションなどそれぞれの売却に強い不動産会社があります。
相続した家を売却する場合、その家の形態に精通している不動産会社を選んで売却を依頼することが成功のコツです。では、そういった不動産会社をどのように探せばよいのでしょうか?方法については、次項で解説します。
一括査定サイトのススメ
不動産一括査定サイトについては、先ほど少し触れましたが、家の売却が初めての人にこそ利用価値のあるサービスです。
なぜなら不動産会社との取引経験がなく売却しようと思っても誰に頼めばよいのかわからない場合に多くの不動産会社と接点を持つことができるサービスだからです。例えば「イエウール」「LIFULL HOME’S」「すまいValue」などたくさんの一括査定サイトがあります。
そのため、それぞれのサイトの特性に応じて使い分けるのがベストです。マンションを売却するのであればマンション売却に強い「マンションナビ」を選び、地方物件であれば大手が多く登録している「すまいValue」を選ぶといった具合です。
こうしたサイトをうまく利用することにより、効率よく不動産会社を比較検討して自分の大切な家の売却を任せられる不動産会社を見つけることができます。
家の相続税計算でわからないことは税理士に相談を
本記事では、家の相続に関して相続税の基本や計算方法、節税の方法などについて解説しました。これらの知識を押さえておけば相続税で損をしたり不利益を被ったりすることは避けられる可能性が高いでしょう。
しかし、最終的には税の専門家の税理士に相談することがおすすめです。相続税は、税率が高いだけに申告漏れを指摘されたり税務署と解釈が分かれたりすると思わぬ不利益につながる恐れがあります。
それを避けるためにも事前に十分な知識をインプットしたうえで税理士に相談し、最善の方法を探るのがよいでしょう。
家の相続税の計算に関するよくある質問
家の相続税を計算する方法は?
家の相続税を計算するには、まず相続財産の評価額を知ることが必要です。家などの不動産は、土地と建物に分けて計算し、それぞれの評価額を算出します。
土地の評価については、さまざまな減額ができる制度があるので、それらを目一杯まで適用して少しでも評価額を低くするのが節税の基本です。評価額の計算ができたら、評価額ごとに設定されている相続税率を乗じて算出します。
家の相続税を下げる方法はある?
家の相続税をできるだけ少なくするには、評価額を低くすることが必要です。不動産は、現金に対して流動性が低い分、評価額が低くなります。
また、使い勝手の悪い土地の形状であったり賃貸にしていたりする不動産の場合は、さらに評価額を低くすることが可能です。こうした制度をフル活用することで相続税を少なくすることができます。
家を相続するときの注意点は?
本文中で解説している注意点は、以下の通りです。
・共有名義で相続すると後になってトラブルになるリスクがある
・相続登記は忘れずに済ませること
・家を相続した場合は代償分割を活用する
・借地権も相続財産に含まれる
・相続放棄には手続きが必要
・相続に関連する各種手続きには期限がある
・納税資金が用意できない場合は物納か売却して現金納税
これら以外にも本文中ではいくつかの注意点について触れていますが、少しでもわからないことはそのまま放置せず、専門家の税理士に相談することをおすすめします。